大判例

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仙台高等裁判所 昭和28年(う)931号 判決

所論は、要するに、被告人等の希望する密輸出の前提となる樺太への密航が可能であるか否か不明なので、それを確めるために先ず密航用の船と船長とを獲得できるか何うかについてのみの準備に着手したに過ぎないところ、末だ船も船長も見当らないうちに仲介者梁興竜の言動に不審を抱き自らこれを中止したものであるから、被告人等の所為は予備罪としての独立の域に達していない予備の中止未遂で、いわゆる非独立的予備罪として犯罪成立の条件を排除するというのである。しかし、原判決挙示の証拠によれば、原判示の如く被告人等は樺太へ貨物を密輸出することを共謀の上、被告人朴において発動機船第二幸福丸を入手して青森港に回航し、被告人金において原判示貨物を入手して青森市に送付し以て密輸出の準備をした事実、及び船員も貨物も整い船に積込むばかりとなつた時発覚逮捕されて実行できなかつたものであり、所論のような事情で自己の意思によりこれを中止したものではない事実を認め得るのであて、記録を精査しても原判決の右事実認定に過誤あることを疑うべき事由は存しない。されば、所論は既にその前提において失当である。なお予備罪として独立の域に達していない予備の中止未遂であると主張するもので、それは予備罪の実行に着手しこれを遂げないことが自己の意思に基く場合の意味に解されるのであるが、予備は犯罪行為の発展過程として着手以前のものである以上、予備罪につき実行の着手ということは考え得られないわけであり、苟も犯人において予備行為に出るときは、その計画せられた諸準備がすべて整つたと否とを問わず予備罪は完全に成立し、そこに障碍未遂とか中止未遂とかいう観念を挟む余地はないものと解さねばならない。いわゆる「予備の中止」とは犯罪準備後における実行開始の意図の放棄をいうのであつて、この場合に刑法第四十三条但書の準用があるか否かに関しては、殺人予備罪につきこれを消極に解した判例(大正五年(れ)第六五八号、同年五月四日大審院第二刑事部判決)があるが、同判決が果して一般的に苟も予備を罰する犯罪につきその予備行為に出た以上は爾後犯罪意図を放棄しても刑法第四十三条但書の刑の免除をうけることなしと断じたものか、それとも殺人予備罪の刑法第二百一条に関する限りその但書に「情状ニ因リ其刑ヲ免除スルコトヲ得」とあるの故を以て中止免刑の規定を準用する限りにあらずとしたものかは、必ずしも明かではない。仮に後者の意味であるとして、刑の権衡上からして、いわゆる予備の中止に対し刑法第四十三条但書が準用せられるとの立場をとつても、本件は密輸出をした後自己の意思によりその実行開始の意図を放棄したものではないから、所論はこの点において既に前提を欠くものであること前敍のとおりである。論旨は理由がない。

〔後略〕

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